第32回大会レポート

第32回大会レポート

人馬一体の哲学を体感し、
ともに楽しみ語り合う
ロードスターの
魅力が凝縮される歴史あるレース

 

2022年3月19日(土曜日)、第32回メディア対抗ロードスターレースが茨城県の筑波サーキットで開催されました。メディア対抗ロードスター4時間耐久レースは1989年の初開催以来、自動車専門誌やテレビやラジオ、インターネットなどで情報を発信する自動車専門誌の編集者、各誌面へ寄稿する自動車ジャーナリストらがレースを通じて走る歓びを体感し、その愉しさをメディアを通して発信し、自動車文化を育むという趣旨のもと、年に一度筑波サーキットに集まり、耐久レースを楽しむという歴史あるイベントです。

このレースは初代ロードスターが誕生した1989年に始まり、1998年には2代目(NB型)へと使用車両を変更、そして2005年には3代目(NC型)へ、2015年から現行型のロードスター(ND型)と歴代ロードスターを用いて行われてきました。レースに使用されるマシンは厳格なレギュレーションのもと全車イコールコンディションが保たれ、タイヤの空気圧以外は一切の改造および調整が禁止されています。つまりマシンの性能差なく、このレースの勝敗を決めるのはドライバーの技量とチームの戦略のみ。戦略という点では、ドライバー1名の連続運転時間が40分までと定められており、これをどのように配分するか、また3回以上と定められたドライバー交代に費やすタイムロスをどのようにマネージメントするかといったドライバー戦略と、レースフィニッシュまでいかに燃料を上手く使うかという燃費戦略が勝負のポイントになります。今大会は前大会に引き続き2.5時間の特別フォーマット(コロナ感染症感染予防に配慮しレース時間を1.5時間短縮)で開催されることになり、レース中の給油が禁止されているため満タンでスタートした各マシンは2.5時間のレースを無給油で走りきらなければなりません。全長2045mの筑波サーキットでの2.5時間におよぶレースではレース終盤の20分ほどで燃料警告灯が点灯するという絶妙な量になっており、各チームは燃費とラップタイムを緻密に計算しながら走らないとゴール目前で燃料切れリタイヤにもなりかねません。2.5時間とはいえ耐久レースならではの面白さが詰まったレースフォーマットになっています。

今大会は計19チーム、69名のドライバーが筑波サーキットに集まり、伝統の一戦に臨みます。2020年大会で通算優勝回数9回となる最多優勝記録を更新し、さらに歴代ロードスターすべてで優勝するという快挙を成し遂げた「Tipo / Daytona」をはじめ、前大会ではレース序盤をリードし特別賞を獲得した「CAR GRAPHIC」、2010年大会を制した「Start Your Engines」、YouTubeチャンネルでもおなじみの河口まなぶ氏が率いる「LOVE CARS! TV!」、チューニングやサーキットドライビング情報を発信する「REVSPEED」、そして毎年熱い走りを見せファンを魅了するピストン西澤氏が率いる「J-wave」と強豪チームが顔を揃えました。また「GOETHE」が初参加したしたほか、2020年大会への参戦を辞退した「マツダ人馬一体チーム」もチームを再結成し再びサーキットへと戻ってきました。「マツダ人馬一体チーム」は専務執行役員の廣瀬一郎、ロードスターの開発主査である齋藤茂樹、操安性能開発部の梅津大輔、川田浩史という布陣で上位フィニッシュを目指します。

予選

決勝レースのスターティンググリッドを決める予選が10時05分にスタートしました。セッションは好天に恵まれるも前日降った雨によりコース後半には一部路面が濡れた部分も残る難しいコンディション。そんな路面コンディションながら予選が始まると各チームは早々にタイムアタックを開始します。まずは前大会回優勝の27号車「Tipo/Daytona」のステアリングを握る橋本洋平さんが1:10:141のタームを刻むと、13号車「ENGINE」の大井貴之さん、99号車「CARトップ」の中谷明彦さん、100号車「LOVE CARS! TV!」の木下隆之さん、813号車「J-wave」の高橋滋さんもそれぞれ1分10秒台のタイムを記録し上位グリッドを争う展開になりました。

予選開始から10分を経過するとコースの後半セクションもドライ路面へと変化。そのタイミングを待っていたかのように74号車「REVSPEED」の梅田剛さんがコースインし、いきなり1:10:000の全体ベストのタイムを記録。さらに梅田さんは2ラップ目もアタックを続け、翌周回で1.09.881をマークし自らのベストラップを更新します。74号車「REVSPEED」からポールポジションの座を奪取したい13号車「ENGINE」の大井貴之さんも果敢にタイムアタックに臨みまずが1:10:029とわずか0.148秒及ばすポールポジションの獲得は叶いませんでした。これによりポールポジションは74号車「REVSPEED」、フロントロー2番手に13号車「ENGINE」、2列目3番手に前大会の優勝チームである27号車「Tipo/Daytona」、4番手に99号車「CARトップ」、そして3列目には100号車「LOVE CARS! TV!」と813号車「J-wave」が並び、優勝候補の強豪チームがともに上位グリッドを獲得し、午後の決勝レースに臨むことになりました。

わずか3周の走行で2周のタイムアタックにかけた「REVSPEED」の梅田さんは2016年のロードスター・パーティレースⅢの初代全国チャンピオン。その経験を生かした走りで、前大会に続き2大会連続でポールポジションを獲得。前大会において自身が記録した予選タイム1:11:050を大きく短縮するタイムを記録しました。「タイヤが温まるとタイムが出ないことがわかっていました。ですからこの2ラップに賭けていました。ポールポジションが獲れて本当に嬉しいです」と予選セッションを振り返りました。一方、マツダ人馬一体チームは廣瀬一郎が予選アタックに臨み、12周目に記録した1:12:613がベストタイムとなり17番手から決勝レースをスタートすることになりました。

決勝

13時28分、ローリングスタートにより2.5時間の耐久レースがスタートしました。ホールショットはポールポジションからスタートした74号車「REVSPEED」。そのすぐ後ろには1つポジションをあげた27号車「Tipo/Daytona」と100号車「LOVE CARS! TV!」が続きます。2周目にはいると優勝を争う実力派チームに対して実行委員会与えたハンディキャップを消化するため(レーススタートから30分以内に消化しなければなりません)、100号車「LOVE CARS! TV!」や12号車「マツダ人馬一体チーム」が早々にピットストップを行います。各チームの戦略により序盤から目まぐるしくトップが変わる上位陣。そのポジションはレーススタートから10分が経過するとようやく落ち着き始めました。この時点で先頭を走るのは60号車「CAR GRAPHIC」、これに55号車「Start Your Engines」、86号車「Hot-Version」、27号車「Tipo/Daytona」、99号車「CARトップ」が続き、レースを牽引していきます。

スタートから30分。スタート直後の激しいポジション争いが落ちつき始めると各チームがそれぞれの戦略にもとづくレース運びを始めます。しかしここでアクシデントが発生。最終コーナーで25号車「カーセンサー/カーセンサーEDGE」がコースアウトを喫し、セーフティーカーが入ります。このセーフティーカー導入で、各チームのピットは一転慌ただしくなります。燃費の再計算を行い戦略変更するチーム、このタイミングを利用してドライバー交代を早々に行うチームも見られます。セーフティーカーは3周にわたり導入されコースの安全を確認した後、レースは再開。ここでトップに浮上したのは4名の女性自動車ジャーナリストが結成した3号車「女性ジャーナリスト連盟」でした。ラップリーダーとなった竹岡圭さんがドライブする3号車を60号車「CAR GRAPHIC」、55号車「Start Your Engines」が追いかけます。

14時28分、スタートから1時間が経過。ドライバー交代のためピットストップを行なった3号車「女性ジャーナリスト連盟」に変わり、55号車「Start Your Engines」が首位へと浮上。これに60号車「CAR GRAPHIC」、99号車「CARトップ」、74号車「REVSPEED」、100号車「LOVE CARS! TV!」が続きます。その後方からは813号車「J-wave」も追い上げ見せ始め、例年通り"強豪"チームが上位に名を連ねる展開に。そんななか上位陣のポジション争いに加わってきたのが12号車「マツダ人馬一体チーム」でした。レース開始から1時間30分を経過するタイミングで、予選17番手からスタートした12号車が着実なレース運びで7番手に浮上すると、周回を重ねるごとそのポジションをアップし4番手にまでそのポジションを上げてきました。

80周目に入り、ゴールまで残り40分となるタイミングで上位陣が続々とピットイン。トップを走る55号車「Start Your Engines」がピットインすると、813号車「J-wave」、12号車「マツダ人馬一体チーム」もピットイン。最終ドライバーに40分間走行させる戦略を取るチームはここで最後のドライバー交代を行います。さらにその10分後には60号車「CAR GRAPHIC」もピットインを行い、これで上位陣はすべてのドライバー交代を終了。この時点で55号車「Start Your Engines」を先頭に、813号車「J-wave」、99号車「CARトップ」、12号車「マツダ」、100号車「LOVE CARS! TV!」がトップ5を形成。残すは30分強。各チームともここからは残りの燃料を気にしながらペースを上手くコントロールし、ポジションアップを狙いながらチェッカーフラッグに向け走り続けることになります。

ゴールまで20分、このあたりかたら燃料警告灯が点灯し始めるチームが現れます。タンクに残された燃料は7Lほど。確実にゴールするためにペースを落とすチーム、うまく燃料をセーブしながらラストアタックを始めるチームなど各チームの戦略が明確に見えてきます。ここで最後の勝負に出てきたのが74号車「REVSPEED」と27号車「Tipo/Daytona」。両車とも1分12秒台のラップを刻みながら熾烈な6番手争いを始めます。74号車「REVSPEED」は102周目で予選タイムにも迫る1:10:743の今大会のベストラップを叩き出す走りをここで見せます。一方首位争いに目を向ければ2番手にまで浮上してきた813号車「J-wave」が周回を重ねるごとトップと差を縮め、14秒差にまで迫ります。しかし残り10分というところで813号車「J-wave」はドライバー連続運転時間違反により60秒のペナルティストップを受けてしまいます。これによって55号車「Start Your Engines」は優勝に一気に近づきます。

残り5分を迎えると、99号車「CARトップ」がペースをあげ、3番手を走る12号車「マツダ人馬一体チーム」に7秒差まで迫ります。またその後方では依然として74号車「REVSPEED」と27号車「Tipo/Daytona」が凄まじいバトルを繰り広げながらポジション争いを展開。チッカーフラッグまで手に汗にぎる展開が繰り広げられました。

15時28分、チェッカーフラッグが振られ、2時間30分の耐久レースが終了。最初にフィニッシュラインを通過したのは予選7番手からスタートした55号車「Start Your Engines」。巧みな戦略で見事逃げ切り優勝を果たしました。2位はペナルティストップを受けながらも今大会もしっかり優勝争いに絡んできた813号車「J-wave」、3位には予選17番手から素晴らしい追い上げを見せた12号車「マツダ人馬一体チーム」がはいりました。圧倒的な予選タイムを記録しポールポジションよりスタートした74号車「REVSPEED」は惜しくも6位フィニッシュ、前大会優勝の27号車「Tipo/Daytona」は7位でレースを終える結果になりました。

優勝した55号車「Start Your Engines」の最終ドライバーを務めた桂伸一さんは「二人が燃料をしっかりセーブし、残してくれたので 後ろから追い上げられる展開となってもちゃんと逃げるだけの余裕がありました」と振り返り、石井さんは「今回はセーフティカーが出たら上手く利用し、きちんと上位にいけるよう準備をしていました。もちろん走りについても新しいことにチャレンジしながら、燃費をあげながらタイムをあげられるよう考えてきました」と今回の勝因を語ってくれました。さらに斎藤洋輝さんは自身のパートで「一度トップに立つことができた瞬間が嬉しかった」とレースを振り返りました。

次回、第33回メディア対抗ロードスターレースは2022年9月に開催される予定です。今大会優勝の55号車「Start Your Engines」の連覇なるか、それとも813号車「J-wave」がリベンジを果たすのか。それともこの両チーム以外が優勝争いに絡んでくるのか。今秋の第33回大会も目が離せません。

第32回
メディア対抗ロードスターレース
レース結果

  • 1位 #55
    Start Your Engines 桂 伸一、石井 昌道、齋藤 洋輝
  • 2位 #813
    J-WAVE ピストン西沢、高橋 滋、富澤 勝
  • 3位 #12
    マツダ株式会社 齋藤 茂樹、廣瀬 一郎、梅津 大輔、川田 浩史