第28回 メディア対抗ロードスター4時間耐久レース 2017.9.2.SAT 筑波サーキット



みんなの4耐

第28回メディア対抗4時間耐久レース イベントレポート
 
 【Vol.2】 4耐史上最もクリーンで厳しいレース展開となった『4時間耐久レース』

 

  

 

 今年はなんとガソリン使用量が4耐史上最少量となる「60リットル」に制限され、だれもが厳しい燃費レースになると予想していました。

 

 2017年9月2日(土)、9月とは思えないほど寒く、冷たい雨が降る中「第28回メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」(主催:株式会社ビースポーツ)が茨城県の筑波サーキットで開催されました。

この伝統のレースは、普段はクルマ情報を発信するメディア自らがクルマの走る楽しさを体感し、世の中に伝える。そして、日本の自動車文化の成熟へ寄与することを志として、初代NA型ロードスターがこの世に送り出された1989年に始まり、今年で28回目の開催となります。今年は全部で26チームが参加しました。

  

 

自動車メーカー交流チーム 3年目の絆

 

 「日本に大人のクルマ文化をつくりたい」という想いの元、日本の自動車産業やモータースポーツを盛り上げるため、メーカーの垣根を越えて結成された自動車メーカー横断チームは、メンバーを入れ替えつつ3年目の挑戦となりました。

今年は、昨年よりロードスターのチーフデザイナーから開発責任者へ転身を遂げたマツダの中山を筆頭に、トヨタ自動車(株) GR Company GR開発部 ZR 主査 の森和生さん、(株)SUBARU WRX系プロダクトゼネラルマネージャーの五島賢さん、(株)オーテックジャパン 開発担当理事の奥田次郎さん、という4社の開発責任者がドライバーとして集いました。
 
 
メカニックメンバーも各社から集結した

 

 開発責任者という立場上、忙しい日々を過ごすメンバーのため、きちんと顔合わせができたのは大会前日。そして、当日の練習走行でようやくお互いのレベルを確認しあえたというのが始まりでした。

まだぎこちない会話に加え、レース展開を大きく左右するドライバー交代や給油の練習、メンテナンスの打ち合わせを行うメカニックの緊張感も加わりピット内は硬い雰囲気。そんな中、ウエット路面での練習走行で抜群の走りをみせ、チームのムードを一気に盛り上げてくれたのがトヨタ森さんでした。彼の走りを見て、次第にメンバーの緊張もほぐれていき、ピットにも少しずつ活気が出てきました。当日、ギリギリの調整になると思われた走行順決めも、あっという間に満場一致で、予選ドライバー&決勝での2回走行ドライバーは森さんに決定しました。

 

 雨も上がり、会場全体が明るくなってきた午前11時。チームの期待を背負って挑んだ予選は上位16台が1秒以内のコンマ数秒を競うという混戦模様。森さんは初めてのロードスターでのレースというプレッシャーを背負いながらも検討し、決勝レースの17番グリットからのスタート位置を確保しました。
 

 


 

 決勝は再び森さんからのスタート。序盤良いペースで周回し、みるみるうちにライバルを抜き去り早い段階でなんとトップを走行!!この展開にチームが湧き上がったのもつかの間、ローリングスタート時にコントロールトラインを越える前に他車を追い越してしまったことで1分間のピットストップペナルティを受けてしまうことに。。。。

 今年はセーフティーカーが廃止されたこともあり、ストップすることなく淡々と進んでいくレース展開でこのペナルティは相当な痛手となります。監督のマツダ佐々木から、第2ドライバー奥田さんに交代するタイミングにその1分を重ねるという指示が飛びます。なんとかそれで最小限のビハインドにとどめることができ、その後はひたすらペースを維持しつつ、燃料ギリギリのところで走るメンバー。順調に、マツダ中山、スバル五島さん、そして最後に再びトヨタ森さんへとバトンをつなぎ、16位の順位で見事完走を果たしました。

  

  

 

 普段はライバルとして切磋琢磨するメーカーの開発責任者同士が、同じチームで夢中になって走り、走った後は皆ピットに笑顔で戻ってくる。そうして、時間が経つにつれチームの心は一つになっていき、最後は心からレースを楽しんで、戦友のようにお互いの労をねぎらっていました。

 今回のチームで一番の重責を課せられた森さんは「あれだけの自動車関係者の皆を引きつけ、笑顔にして、繋げるというロードスターと言う素晴らしいクルマの違う面を見せつけられた様な思いです。できれば、この素晴らしい時間を交流チームでまた共有したいです。今年このレースに参加できたことを本当にうれしく思います。」と語り、マツダ中山は「これまでも日本の自動車文化のレベルを上げるというテーマで、各社のエンジニアが集まる会合や交流会などは何度か経験してきました。しかし、交流を一歩進めて一緒にレースを戦うということは、より深い意義があると思います。今回は、懐の深い交流の場になったと感じました。私自身、数年前までは人馬一体チームを応援するサポーターに過ぎませんでしたが、今日こうやってレースに参加することができました。しかもメーカー交流チームの一員として、です。私たちのロードスターは、訓練さえすれば誰でもレースを楽しむことができるクルマなんだ、ということを身を以て証明できたと思います」と語りました。

 

 

 

人馬一体チーム、本気で勝ちにいく

 

 「予選で1分11秒代を記録する、決勝では6位以内入賞を目指す。」これが、今回初めて監督を務めることになったロードスター・アンバサダーの山本が立てた人馬一体チームの目標でした。

今年、燃料量が60Lに減らされるということと聞いて一番ショックを受けていたのが山本で、当日まで何度も燃費とラップタイムのシミュレーションを行い、計算しつくして筑波へやって来ました。

 

 今年の人馬一体チームドライバーは常務執行役員 前田育男(デザイン・ブランドスタイル担当)、参戦2年目の常務執行役員 青山裕大(営業領域総括、ブランド推進・グローバルマーケティング・カスタマーサービス担当)、初出場の執行役員カスタマーサービス本部長 梅下隆一の3名に開発テストドライバーの酒井隆行、寺川和紘を加えた5名で参戦します。

  

 

 予選ドライバーは前田が務めました。

ここ数年、予選は白熱したタイムアタック合戦となっており、他のチームとのバトルというより、いかに過去の自己タイムを超えられるかという“己との戦い”という感じです。そんな中で前田の結果はというと、、、なんと、自己ベストの1分11秒337を記録していました。これは山本が立てたチームの目標を上回る記録でもあり、順位としては12位でしたが、今年は己との戦いを制したという結果でした。
  

  

 

 太陽が傾き始める午後4時にスタートをきった決勝レース。

人馬一体チームのトップランナーは前田。26台がクリーンなスタートを切り、集団がだんだんばらけてくると、人馬一体ロードスターはスルスルとリーダーボードを駆けあがっていき、なんと、レース開始から約50分後、前田から2番手の酒井に交代する直前に、モニタートップに12という数字が輝くことに!そこから第2ドライバー酒井、第3ドライバー青山に交代するまで、このポジションをキープし続けたのです。
  
 
  
 
 その後はライバルたちが攻めの体制を築き、人馬一体号は一時順位を落としますが、10位でバトンを受けた寺川が、淡々としかも目標燃費、目標タイムをクリアしながら周回を重ねていきます。そして終盤、ガス欠を恐れてペースダウンしていくマシンや、本当にガス欠でストップしてしまうマシンがどんどん現れ、、、午後8時。寺川がトライブするゼッケン12 人馬一体号は8位でフィニッシュラインをクロス。ここ数年でのベストリザルトとなりました。
 
 
 

 

 レース後、夜空にそびえるモニターに刻まれた12の文字を背景に、過酷な4時間を戦い抜いたチームメンバーの顔にはすがすがしい笑顔があふれていました。

チーム監督の山本は、「私たちが立てた計画以上に今回のドライバー5名は良い燃費、良いラップタイムで周回してくれました。本当に良いレースができたと思います。しかし、上には上がいます。今回のドライバーには、より腕を鍛えてもらい、来年は本気で6位以内入賞を狙いたいと思います」と語りました。
 
 

 

 ガソリン使用量が60Lに制限され、厳しい燃費レースとなると予想された今年の4耐。

心配されたガス欠は26チーム中5チームにとどまり、そして驚くことに、トップでゴールしたJ-Waveチームは去年記録の180周を超える182周をラップしていました。

 

 第1回大会、初代ロードスターでのレースはガソリン使用量105リットルで優勝チームの周回数は178周、

9年後の第10回大会2代目ロードスターでのレースは83リットルで175周、2005年の第16回大会3代目ロードスターでのレースは70リットルで180周。そして今年は60リットルで182周というデータがあります。天候やルールで多少のコンディションの違いがあれど、ドライバーの技量やチーム力によって、燃費を考えた走りができる凄さもロードスターの魅力なのだと、改めて見直すことが出来る一方で、今後もますますレベルの高いレースになっていくのだろうということがうかがえる今年の4耐でした。