プロジェクトを知る01

プロジェクトを知る 統合制御システム開発

「ひと中心」のクルマづくりを掲げるマツダの自動運転技術とは

「ひと中心」「走る歓び」など、以前からドライバーファーストの開発思想を掲げてきたマツダですが、実は30年以上も前から自動運転に関する技術開発を行っていた事実は、意外と知られていません。今回はマツダの先進安全/自動運転(ADAS/AD)領域の要素技術や制御システム開発に携わり続けてきたエンジニアにインタビューを行い、マツダにおける自動運転技術開発の歴史、マツダ独自の自動運転戦略やADAS開発、ドライバー異常時対応システムを導入したCX-60の開発エピソードなどについて詳しく聞きました。

プロジェクトメンバー

山本 康典

統合制御システム開発本部
先進安全車両開発部
部長 1988年入社

小嶋 浩一

統合制御システム開発本部
主査 1990年入社

ストーリー

Q.統合制御システム開発本部のミッションは?

山本:パワートレインを含む車両システムを統合化し、全体最適な車両システムとしてのマツダらしさの価値創出をミッションとしています。これを実現する手段としてのモデルベース開発の全体推進やモデルによる機能最適化開発を実施し、シンプルでわかりやすい制御システムの開発に取り組んでいます。私と小嶋はADAS/AD領域のシステムを構成する要素技術の開発や制御システム/センシング部品に関する量産設計・開発および量産車の改善を担当しています。

Q.マツダの自動運転に関する取り組みの始まりは?

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小嶋:マツダは約30年前から自動運転に関わる要素技術の研究に取り組んでおり、安全運転支援や自動運転のベースとなる技術をモーターショーなどで発表していました。

山本:30年前はレーダーやアクチュエータが簡単に手に入る時代ではなかったので、アクチュエータや自動ブレーキを自分たちで一から開発していました。その後、これらの技術が安価で手に入るようになり、開発のポイントは「いかにソフトウェアで機能を上げていくか」という部分にシフトしています。

小嶋:私は長らく制御領域の仕事を続けてきました。当初はサプライヤーの方に「何でクルマにミリ波レーダーを載せるんですか?」と言われたこともありましたが、20年、30年と続けていくうちに世の中が進化し、そのようなテクノロジーが実際にクルマに搭載される時代が到来しました。今になって思うのは、やり続けることに価値があったんだなということですね。

Q.マツダの自動運転に対する現状のスタンスは?

山本:前出の通り、マツダでは30年以上前から自動運転システムの技術開発を進めていますが、お客さまに安心して使っていただけるレベルの技術を市場に投入することは、まだまだ難しい状況であると考えています。現状、他社も含めてレベル3の自動運転システムは限定された条件下でしか使用できませんし、インフラ整備も含めて非常に長い時間が掛かることが想定されます。そのため現時点では、高度運転支援技術を用いてお客さまの運転をサポートし、現状のインフラの中で可能な限り事故を削減していくことに重点を置いています。「マツダは自動運転に本腰を入れて取り組んでいないのでは?」と思われがちですが、自動運転のための技術開発はしっかりと推進しながらも、まずは現時点でお客さまに価値提供できる「事故低減」に注力していくことが重要であると考えます。

Q.「人馬一体」「ひと中心」「走る歓び」を掲げるマツダのADASのあり方とは?

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小嶋:マツダのADAS「i-ACTIVSENSE」には、長距離走行時などにドライバー負担を軽減するレーダー・クルーズ・コントロール、追従走行とステアリングアシストで渋滞時の運転疲労軽減をサポートするクルージング&トラフィック・サポートなどの機能がありますが、単純に前のクルマに追従していくにしても、人にとって心地よい加減速と、そうでない加減速があるはずです。カーブの曲がり方にしても車線のセンターをトレースし続けるのではなく、アウトインアウトで曲がっていく方が気持ちいいはず。私たちマツダは「人はどのような運転に快適さを感じ、どのような運転に不快さを感じるのか」ということを徹底的に研究・追求しています。私たちの担当分野では、クルマを研究すると同時に人間を研究することが非常に重要です。さまざまなデータを活用することはもちろん、実際に社内のテストドライバーにテストコースを走ってもらい、その結果を解析するような取り組みも地道に続けています。他社と比べて余分な時間を掛けてしまっている部分はあるかもしれませんが、人間の特性を踏まえた開発にはそれだけの価値があると考えています。

ブレーキに関しては、最後の最後は事故回避の自動ブレーキが掛かりますが、それ以前の段階ではブレーキを促す警報が鳴ります。その警報のタイミングについても「自分で踏むつもりだったのに、先に警報がなって不快だ」と思われるようなシステムを作ってしまったらエンジニアとしては負けだと思います。自動制御は100%ではありませんし、人間の反応や判断力、知覚能力は想像以上に高いものです。人間とクルマ・機械が協調し、最大の安全性能を提供するというのがマツダの考え方なので、ここに関してはしつこくやり続けていきたいですね。

Q.今後のマツダの自動運転戦略や他社との違いは?

山本:やはり「ひと中心」に主眼を置いた「走る歓び」を提供するための自動運転技術こそが、マツダの目指すところであると考えています。マツダは2022年に、ドライバー異常時対応システムを搭載したCX-60を発売しました。ドライバー異常時対応システムは、ドライバーモニタリングというセンシング技術によってドライバーの異常を感知するものです。たとえばドライバーが運転中に意識を失った場合、クルマのシステムがオーバーライドすることで、クルマを最適な場所まで自動運転で運び、周囲を含めて安全な状態維持を図るものです。

小嶋:ドライバーモニタリングの開発に関しては大変苦労しました。人間が倒れた、意識を失った、よそ見をしている、そんな人間の状態をセンシングで判断しながら制御を行う必要がありますし、技術的な指針やガイドラインもない状況であったため、開発については国土交通省の審査部門と一緒に進めていきました。審査する側も初めての経験なので非常に時間が掛かったのですが、結果としてCX-60は、ドライバー異常時対応システムに関する最新の国連協定規則に国内で初めて対応した市販車となったのです。

Q.統合制御システム開発本部の特徴や強みは?

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小嶋:2015年に統合制御システム開発本部が発足したことにより、それまで別々の組織に在籍していたさまざまな制御領域のエキスパートが一堂に介して開発に取り組める体制となりました。エンジンの専門家、シャシーの専門家、ブレーキの専門家、人間研究やレーダーの専門家など、さまざまな人間が同じフロア内で仕事をしているので、以前よりもかなりスムーズに協業できるようになりました。また、統合制御システム開発本部が立ち上がって以降は、ソフトウェアを内製で開発しています。もちろん最初は大変な苦労をしましたが、自分たちで作ることで力もつき、人も育ったと感じています。

山本:私たち自身でからくりを解き、モデルで検証しているのですが、一箇所に人材が集まっていることもあり、新しい価値・機能の検討も非常にスピーディーに進みます。また、一箇所に集まっているだけでなく、一人ひとりの能力が非常に高いことも特徴です。他社の同機能の部門と比べれば小規模な組織ですが、やり切ってしまう能力と熱意がある人たちが集まっています。

Q.統合制御システム開発本部が求める人物像は?

山本:マツダのクルマづくりの面白さは、さまざまな理想を独自のアプローチで徹底的に追求できる点にあります。たとえばモデルベース開発においては、人間の行動や現象までも数値化・モデル化して開発に活かすことで、真の「人馬一体」を実現させています。このような「ひと中心」の哲学を軸に、モデルベース開発やデザインといったマツダ独自の強みを掛け合わせたクルマを、世界中のお客さまに提供したいと思う方は、ぜひマツダに来ていただきたいです。統合制御システム開発本部に限らず、マツダであればどんな部門にいても幅広い仕事に携わることができるので、領域を問わずチャレンジしたい方から一芸に秀でた尖った個性をお持ちの方まで、さまざまな方に活躍のチャンスがあると思います。

小嶋:開発部門なので制御系、電気系、機械系などさまざまな分野のエキスパートが在籍していますが、分野や領域を問わず、物事に対する興味をとことん追求したい人がマツダに向いていると思います。「これをやりたい」と言い続けて、その分野のエキスパートになっている人がマツダにはたくさんいますからね。もちろん現時点で飛び抜けた専門性を持っている人、その専門性をマツダで活かしたいと考えている人も大歓迎です。

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※部署名・役職名は、2023年6月取材当時のものです。

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「ひと中心」のクルマづくりを掲げるマツダの自動運転技術とは

パワートレイン・電動化領域

マツダが目指す次世代のバッテリーEVを生み出すために

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